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台所にはママの念願かなって現代の主婦の夢「システム・キッチン」が完備されていた。
マイホームに暮らし始めた日、ママは言った。
「せっかくシステム・キッチン入れたんだから、外食にしましょう、汚れるから」〉家がミエの産物でありつづけるかぎり、家は家族の生活を包む容れ物たる「住まい」とはなりえないことを、どうかお忘れなく。
これはよく知られている『方丈記』の一節であるが、ここで鴨長明がわれわれに教えてくれるのは、きわめて基本的でシンプルな住まいでも十分に生きてゆけるし、また、そのほうが知的な生き方であるということである。
鴨長明が方丈の庵を結んだ鎌倉初期のころ、日本人の住まいは、奈良、平安以来の歴史をふまえて、寝殿造りなどのほぼ完成された住宅形式をもっていた。
いっぽう、庶民の住まいである京都の町家なども、公家や武家の住まいにくらべれば粗末なものの、鴨長明の庵ほど、シンプルなつくりではなかった。
そうした時代にあって、彼がこうした住まいをつくったことには、精神的な高さを求めて、物質的なものを拒否した生き方がよく表われている。
おもしろいのは、文中にあるように、折りたためば、車にのせてどこへでも運ぶことができたことである。
現代ならば、さしずめ固定資産税のとれない、税務署泣かせの家ともいえようか。
モービルーハウスのはしり、あるいはプレハブの元祖である。
アメリカでは、全人口の1割がどこへでも移動できるトレーラー家屋、モービルーハウスに住んでいるという。
そのすべてが、のべつまくなしに移動を繰り返しているわけでもないだろうし、低所得層の否応なしの選択となっている面も否めない。
しかし、文明がすすみ、工業化社会が発達すると、土地や建物に執着せずに、移動する住まいをライフスタイルとして求める人が増えるということだけはたしかだろう。
居住空間というもののあり方を考えさせられる傾向である。
人間の生活のシステムというものは一部分だけが変わってもダメで、ゆりかごから墓場まですべてが変わらなくてはどこかに組語が生まれる。
最近は、人の誕生も死も病院で行なわれるのが普通のことになってしまった。
昔は「タタミの上で死にたい」などといったものだが。
それに昔の日本家屋では葬式なども自宅で行なえた。
しかし、たとえばいまのマンションでは葬式をしようとしてもまず無理だろう。
ご位牌はこちら、ご親族の方はこちら、棺桶はこちら、弔間の方はこちらと3LDKをフルに使ってもそれは葬式にはならない。
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